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「………………」
デスモディウムは、ハギの青ざめた顔を見ていた。
ハギの小刻みに動く目と乾いた唇も見逃さない。
(見ている……)
ハギは、デスモディウムが自分を見ていることに気づいて戦慄した。
フーシは、暢気にお茶を飲んでいて、ハギのこともデスモディウムのことも見ていない。
同じ空間にいるのに、ハギとデスモディウムとはまるで違う世界にいるようだ。
「お茶をいただこう」
デスモディウムはお茶を一口含んだが、それは振りだけで実際には飲んでいない。
(飲まないんだ……。毒入りを警戒して?)
彼らが相手にする奴らは、毒を盛るなど当たり前なのだろう。
その用心深さにも戦慄させられる。
デスモディウムは、フーシに話しかけた。
「こちらではとても珍しい品を扱っていると聞き及び、不躾ながらも押しかけてしまいましたが、快く商談に応じていただけてとても感謝しています」
「こちらこそ、外国の話も聞けて、いい取引ができるなら大歓迎ですよ」
ハッハッハと、フーシは高笑いしている。
ハギは、奥に引っ込んだ。
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