2.特官デスモディウム

12/17
前へ
/252ページ
次へ
(よくもまあ、ペラペラと言葉が出てくるものね。さすが、特官。身分の偽称などお手の物なんだわ)  二人で当たり障りのない一般の話題をひとしきりしたのち、小さな壺をお近づきの印だと置いて、デスモディウムは帰っていった。  その壺を、フーシが感心しながら眺めた。 「この辺りでは、見たことのない壺だなあ。高く売れそうだ」  ハギは、フーシに確認した。 「あの人が本当に旅の商人だと確認したの?」 「当たり前だろ」  フーシは、自信満々に答えた。 「何年、ここで商売をしていると思っている。身元の確認は基本中の基本、彼は王様の印の入った許可証持ちだ。偽造ではない。正真正銘の本物。私の目は誤魔化されないぞ」  ハギは、フーシの熱さとは逆に、聞けば聞くほど冷めていく。 (そりゃそうでしょう。特官は王様直属なんだから、王宮発効の証明書を手に入れるなんて、全然難しくないんだから。というか、それって、もう本物じゃない!)  簡単に、本物が手に入る特官のご身分が羨ましい。
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加