2.特官デスモディウム

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「ワアーーー!」  外から騒がしい声が聞こえてきた。  弟妹たちが元気よく帰ってきて、家に入ってきた途端、床や椅子の上でドタンバタンと跳ねて飛んで、埃が立ち、賑やかになる。 「ただいまー」  エンモと第四夫人が一緒に入ってきた。  エンモ一人では子どもたちを見きれないので、第四夫人も駆り出されたのだろうが、第四夫人の子どもも混ざっている。ナローマは、第四夫人の子だ。  第四夫人は、ハギを見て言った。 「あら、ハギ。お母さんには会ったの?」 「ええ。もう家に帰ったわ」 「ハギ! 見て、見て!」  ナローマは、完全に興奮状態にあった。  手に短剣を持っていたので、驚いた。 「それ、どうしたの?」 「買ってもらったんだぞ!」  ヘヘンと、ハギに見せびらかしてきた。 「誰に買ってもらったの?」  驚いていると、フーシに言われた。 「私が買ったんだ。そろそろ、自分の短剣が欲しくなったんだろうと思ってな」  ナローマが短剣を持ち出して失くしたと思っているフーシが甘やかした。 (まったく、息子には甘いんだから!) 「いいだろう。僕のだからな! 絶対に盗むなよ!」  短剣を持ち出したのがハギだと感づいているのか、念を押してきた。  自分は一生買ってもらえない短剣。  羨ましくて睨みつけていたら、「お前には嫁入り道具を持たせてやるから、そんな目で見るな」と、フーシに言われた。  たまに、こうして父親らしい顔を見せるから、フーシを完全に憎みきれない。
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