2.特官デスモディウム

15/17
前へ
/252ページ
次へ
 デスモディウムが、錆色の目でハギを見る。  ハギは、緊張して尋常でない量の汗が流れてきた。 (これ以上の抵抗は無理か……)  観念して、懐から鍵を出した。 「見逃してくれるなら……。これです……」  涙をこらえてそれを渡した。 (あああ、5000ギンが……、離れていく……)  受け取ったデスモディウムは、偽物でないか慎重に確認している。 「確かに、本物だな」 「それ、誰の鍵ですか?」  デスモディウムは、黄金の鍵に刻まれた文字を見せた。 「持ち主の名なら、ここに刻んである。『この世を統べる永遠王アラリド』と」 「あ!」  ハギは、それを読めなかった。  文字を読める者ならば、とっくに持ち主がわかっていた。  文字を読めないことが知られてしまって、とても恥ずかしい。 (素直にフーシに渡しとけば、すぐに誰の物かわかって、このようなピンチに陥らなかったのかも……)  初めて後悔した。 「ごめんなさい! 私、文字を読めないの。だから、アラリド王の鍵だったなんてわからなくて。もし、知っていたら、すぐに届けました!」  精一杯、同情を請うように謝った。 「この文字は、古代文字だ。読める者は少ない。気にする必要はない」  意外なことに、デスモディウムが恥じるハギを優しく慰めてくれた。
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加