53人が本棚に入れています
本棚に追加
デスモディウムが、錆色の目でハギを見る。
ハギは、緊張して尋常でない量の汗が流れてきた。
(これ以上の抵抗は無理か……)
観念して、懐から鍵を出した。
「見逃してくれるなら……。これです……」
涙をこらえてそれを渡した。
(あああ、5000ギンが……、離れていく……)
受け取ったデスモディウムは、偽物でないか慎重に確認している。
「確かに、本物だな」
「それ、誰の鍵ですか?」
デスモディウムは、黄金の鍵に刻まれた文字を見せた。
「持ち主の名なら、ここに刻んである。『この世を統べる永遠王アラリド』と」
「あ!」
ハギは、それを読めなかった。
文字を読める者ならば、とっくに持ち主がわかっていた。
文字を読めないことが知られてしまって、とても恥ずかしい。
(素直にフーシに渡しとけば、すぐに誰の物かわかって、このようなピンチに陥らなかったのかも……)
初めて後悔した。
「ごめんなさい! 私、文字を読めないの。だから、アラリド王の鍵だったなんてわからなくて。もし、知っていたら、すぐに届けました!」
精一杯、同情を請うように謝った。
「この文字は、古代文字だ。読める者は少ない。気にする必要はない」
意外なことに、デスモディウムが恥じるハギを優しく慰めてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!