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「今夜は町で一番の金持ち。きっとたくさん入っているぞ」
エンモのお陰で同業者を出し抜いて、一番乗りできたフーシは機嫌がよい。
小さなライトの光だけを頼りに、スコップで墓を掘り返す。
やがて出てくる真新しい棺。
蓋の釘を外すと、ギギギイと嫌な音とともに開ける。
黄金色の埋葬品が、遺体の周囲にビッシリと敷き詰められていた。
「あるある」
黄金の盃。遺体が身に着けている黄金のネックレス。宝石がちりばめられた仮面。素晴らしき品々。
ハギとフーシで次々とズタ袋に入れていく。
期待以上の成果だったため、フーシは嬉々として重たいズタ袋を担いだ。
フーシは、盗んだ品を袋に入れてしまえば、決してハギに触らせない。
「元通りに埋め戻しておけ」
ハギに命じると、出口に向かった。
ここで一番怖いのは、警察に見つかることじゃなく、同業者に襲われること。
同業者も、金持ちが死んだら埋葬品を狙ってやってくる。
鉢合わせになれば、殺されて、せっかく掘り出した品を奪われる。
ハギを同行させる理由のもう一つは、ライバルが来たら盾にするためだ。
戦いになれば、フーシはハギを見捨てて真っ先に逃げるだろう。
今だって、後始末をすべてハギに押し付けて、自分は安全な場所に素早く隠れている。
ハギは、せめてもの弔いの気持ちで埋め戻し前に遺体の衣服を整えた。
すると、袖の下に小さな固いものを発見した。
取り出してみると、それは黄金の鍵だった。
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