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人を好きになる瞬間は曖昧だ。
この人なのかも、と心が決まる時はいつだって不安定で、同性ならなおさら。恋情なのか友人としての慕情なのかその境目に苦しむ。
だからこそ、精いっぱい相手を想う。心を開いて相手を受け止める。ただ信じるのは互いの気持ちだけ。
花にもいつかそんな時がくるだろう。
「アメリカにも遊びにおいで」
別れ際、禄朗は花に自分の名刺を渡した。
「楽しいところをいっぱい紹介してあげる。仲良しの子と一緒にさ」
「はい」
キラキラとした瞳を見せる花に、たくさんの幸せがあるように。
「じゃあね、明日美。元気で」
「みっちゃんも。またね」
手を振りながら別れを告げ、彼らが人ごみの中に消えていくのを見届けた。その背中が見えなくなると瑞生と禄朗はどちらからともなく手をつないだ。
「帰ろうか」
「うん」
長くてつらい道のりだった。
たくさんの人を傷つけて、自分だってたくさんの涙を流した。
だけど後悔はない。その先が今に繋がっているから。経験した全てが糧になる。強さになる。
「おなかいっぱいだよ」
「美味しかったよな」
二人で並んで歩いていく。
この先も、ずっと。どんなことがあっても。
「好きだよ、瑞生」
「僕も……愛してる」
顔を寄せ合い、ふふ、と笑いあえる。その先に続く未来はきっと輝いている。
僕は僕の人生を愛している。
Fin
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