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さすが禄朗だった。
昔からそういうマメさはすごいと思っていたけど、目の当たりにするとキュンとときめいてしまう女の子の気持ちが分かった。
瑞生だっていつもときめかされている。
「遅くなってすみません。今日はよろしくお願いします」
握手を求められてはっとしたように明日美は「元妻です」と手を差し出した。そこに嫌味だったり自分を誇示するような意地悪さはない。そのままを口にしただけだった。
だけど禄朗がその言葉に一瞬つまったのを瑞生は見逃さなかった。何年たってもそれは禄朗の心に影を落としているようだった。
表情を崩さず「明日美ちゃんですね」とメラメラとする気持ちごとがっちり手を握っている。
火花を散らす様に握手を交わす二人に割って入った善本は、明日美の手を禄朗から離しながら自らも自己紹介した。
見た目の穏やかさとは違ってなかなかのつわものらしい。
「じゃあ、行きましょうか」
席を予約してもらっているレストランへと向かう。自然と禄朗の隣に並んだ瑞生に明日美はクスリと笑った。
「どうした?」
「ううん。昔、須賀さんの姿を見たときに嫌な予感がしたけど、当たっていたんだなって。その時は全然知らなかったんだけど、きっと気がついていたんだわ。二人がお似合いだって」
どう返せばいいかと困惑した笑みを浮かべた瑞生に禄朗が乗っかかる。
「俺こそ幸せそうな家庭をみせつけられたみたいで、しばらく凹みましたよ」
「そうなの? それは嬉しいな」
いつになく好戦的な明日美に瑞生は冷や汗をかいた。
「ま、まあ、昔の話だし」
「みっちゃんにとってはそうかもしれないけど、ねえ。私たちにしてみれば気が気じゃなかったわよね?」
「そうですね。どうしてやろうかなとは思いましたけど」
禄朗もニッコリと笑いながら明日美と対戦する。なんだこの殺伐とした空間は。
話を変えようとして瑞生は善本へと話題を振った。
「予約までしていただいてありがとうございます。とてもおいしくて席を取るのも難しいって聞いていましたが」
だけど善本までもが挑戦的な視線を瑞生に向けた。
「大切な愛娘の成人の記念ですからね。ありとあらゆる手段を使ってでも用意しますよ」
「そ、そうですね」
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