ショーケン

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 雨が降ったとき、いかにモチベーションを上げていくか。  かなり重要な問題だ。  弁当を食ったあとのことを考えると気が重い。 「あ、近々、わたし乗りたいんだけど」  聞かれる相手もいないというのに、小声で囁かれた。 「またやんのかよ、あれ」  前回のことを思い出した。  あっちゃんのプロジェクトはおそろしく面倒臭い。  これまで二回、あっちゃんに頼みこまれ、言う通りに実行したが、もう二度としたくなかった。  失敗したときのありさまといったらなかった。  ……成功したのを見たこともないのだが。  それにしても、前回からまだ三ヶ月もたっていない。 「あ、いまショーケン、思ったでしょ。『もう新しいの見つけたのか』って」 「いやいや、思ってないよ」 「顔にすぐ出るから、接客業向いてないんじゃない?」  基本やる気のない弁当屋にいわれたくはない。 「今回はうまくいくといいな」 「なにその失敗前提みたいな言い方!」  顔をしかめるあっちゃんに、俺はびしょ濡れになっている割引券を渡した。 「ま、いつでもおいでよ」 「その前に作戦会議もするからよろしくね」  あっちゃんは、サービス、といって割り箸を二本入れた。 「いらねえよ」  俺は割り箸を一本戻した。 「しょうがないな、手を出して」     
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