ショーケン

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ショーケン

 その日は朝から大雨だった。  せっかくのかきいれどき、ゴールデン・ウイークだっていうのに散々だ。  木の下で体を縮め、人が通りかかると声をかけた。  どうせ濡れるのなら、体を動かしている方がましだった。  お客がまったくつかまらない。  わざわざ雨の日に、のんびりと観光なんて、したくてもできないだろう。  災難は続いた。  いつも昼休みに寄る蕎麦屋の席が埋まっていた。  しかたなく弁当屋まで小走りで向かった。 「うっわ、ショーケンびしょびしょじゃん」  大学生バイトのあっちゃんが顔をしかめていった。 「こんな雨だってのにお客さんくんの?」 「いまんとこゼロ」 「絶対お客さんこないってのに待つって、キツいねえ」  俺は唐揚げ弁当を注文した。 「わりといいんだよ、雨のなか走るのも」  雨の運転も悪くはない。  走っているうちに、肌から湯気が立ち上ってくる。  自分の体温が冷たさに負けぬように熱くなっていく瞬間が好きだ。  お客がこなくては、どうにもならないのだけど。 「でもせっかくなら晴れのほうがいいよねえ」  弁当をビニール袋に入れながら、あっちゃんがいった。 「そりゃあな」  俺だってもちろんそう願っている。     
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