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「やはり、歩君はお二人と話してたんですね……いや、驚きました。歩君に意識があるとは……」
五十嵐が、はたと思い出す、
「あいつ、光るところを通ってコロボに来たって言ってたな。先生、わかりますか?」
伊達が慌てて手を振る。
「いえ五十嵐さん、おそらく今の科学では証明が難しいと思います」
「ただ歩君が、このコロボに現れたのは揺るぎない事実ですから、皆さんの呼びかけで、またコロボに戻る可能性もあります」
「先生そうですよね」
千尋が返し、
「ね、あゆむ君!」
と歩に話しかけた。
「あゆむ、俺がこうして約束通り来たんだから、お前も約束守れよ!」
五十嵐も千尋に続く。
南美も真も、歩と行った動物園の話など、歩が思い出すきっかけになりそうな話を懸命に続けた。
意識の底に居る歩は、遥か上の方から暖かいものを感じていた。自分が今漂っている、冷たくて暗い場所とは違い、暖かくて明るい場所。
なんだか懐かしい気がする。
ぼくは、生まれてからずっと一人で、この暗い場所に居たんじゃなくて、上の方の暖かい所に居たことがある。意識の底に再び堕ちてから初めて、歩はおぼろげに思い出した。
歩の意識は少しづつ、上に向けて漂い始めていた。
「あゆむ君、私たちの子のお兄さんになってくれるんでしょ?」
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