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千尋がお腹をさすりながら、歩に話しかける。
「えっ?千尋さん、赤ちゃんが?」
南美が目を丸くする。
「はい。四ヶ月です。あゆむ君が、可愛がるよって、言ってくれたんですよ~」
「そう言えば南美さん、やっぱり胎教で、今から子守唄歌ってあげた方がいいですかね?」
「うん、私はそう思うな」
「じゃあ先輩、後輩ママの私に、子守唄教えてください!」
「ハハ……わかりました、千尋ママ」
そう言うと南美は、シューベルトの子守唄を口ずさんだ。涼しげなソプラノが室内を癒す。
眠れ 眠れ 母の胸に
眠れ 眠れ 母の手に
こころよき歌声に
むすばずや 楽し夢
眠れ 眠れ 母の胸に
眠れ 眠れ 母の手に
あたたかきその袖に
つつまれて 眠れやよ……
「あ!」
千尋が声を上げ、お腹に手を当てる。
「今、蹴った、南美さん、この子蹴りました!」
「まぁ、本当?良かったわね~」
「南美さんの子守唄、すご~い!」
「こうなったら、この子にも、南美さんの子守唄ずっと聴かせようかな?南美さん、録音いい?」
「ちょっと、千尋さん、ハハハ」
賑やかになった病室で、五十嵐が一人下を向いている。千尋が気づく。
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