29.兆し

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「あれ?ひろちゃん、ちょっと泣いてる?」 「バカ野郎!なんで俺が泣くんだよ!」 「ふ~ん……鬼のなんとか?まっ、いいけど」  五十嵐の脳裏に、幼い頃に母が唄ってくれていた子守唄がよぎった。 南美や千尋の無償の愛の姿と、迷惑ばかり掛けて来た田舎の母親が重なり、五十嵐は胸が締め付けられた。 「みなさん、少し休憩しましょう」 伊達が声をかける。かれこれ三時間、代わる代わる歩に声をかけ続けていた。 「そうですね。二階のカフェでコーヒーブレイクしましょう。意外と美味しいスイーツあるんですよ」 真が続ける。 「行きましょ行きましょ!スイーツ!」 千尋が皆の背中を押しながら、全員が入り口に向かう。 「あゆむ君、また来るね~」 そう言って千尋が手を振り、扉を閉めかけた。 その時、 「こんにちは、ぼくコロボ。あなたのお名前は?」 突然コロボが喋った。
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