30.ぼく、あゆむ

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真は歩の小さな手を握りしめ、静かに肩を震わせている。 五十嵐も千尋も伊達も、涙で視界がにじむ。 「マ、ママ、いた……いよ……」 「ごめん、痛かったね……でも、もう少し、ママにぎゅってさせて……」 南美は、二年分の愛を注ぐかのように、ずっと歩を抱きしめていた。 「あゆむ、俺わかるか?」 南美に促された五十嵐が、歩に顔を寄せ話しかける。 「……アニキさん」 「そうだ、アニキさんだよ、あゆむ!」 五十嵐は嬉しさの余り、歩の髪をくしゃくしゃにする。 「アニキさん……やくそく、まもったね……」 「ぼくも、まもった?」 「当たり前だろ!あゆ…お前は……男の中の……お……」 五十嵐は必死に涙を堪え、言葉にならない。 「ちひろさん…赤ちゃんは?」 「うん、すくすく育ってるよ産まれたら、いっしょに遊んであげてね」 「うん、ぼくかわいがる」 「もう……あゆむくん……いい子すぎ……ぐすっ……」 二年ぶりに目覚めた歩の体調に注意しながら、皆がすこしづつ探るように、歩と話を続けた。  五十嵐はその様子を見ながらそっと病室を抜けると、突き当りの扉を開け、外にある非常階段に出た。 束の間スマホを見つめ、母の番号を押す。 「浩行か?」     
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