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「あ、ああ……」
「なんね?元気にしとった?」
「ああ……」
「あんた、どうしたと?」
「なんか、困っとるの?」
「いや、母ちゃん、俺…俺な……」
「……」
「……親父になる」
「……あんた、ほんとね?!」
「ああ、ほんとだ」
「そうか、あんた、立派にやっとったんね……」
「心配しとったんよ」
母の声が震えている。
「母ちゃん、長いこと心配かけてごめん……」
「そしたら、孫連れて三人でおいで」
「ああ……孫の顔、見せに、帰るから」
「待っとるよ浩行。三人分しっかり稼がないかんね」
「身体気ぃつけて、がんばり。困ったら、連絡しんしゃいね」
「あ、ああ母ちゃん……」
「今まで……ごめん……」
不義理な自分への母の温かさが心に沁み、五十嵐は電話を握ったまま、しばらく肩を震わせていた。
「あ、ひろちゃん。探したよ~」
非常階段の扉が開き、千尋が声をかける。
五十嵐を探していた千尋は、少し前から様子を見守っていた。
「早くあゆむ君のとこ行こ!」
「ああ……」
「千尋。生まれたらお袋んとこ行くから」
「うん、わかった」
五十嵐は千尋に肩を借り、病室に戻った。
室内では皆が歩とコロボに注目していた。
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