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先生は深い溜息を吐き出した。
そして、俺に向き直って言う。
「貴方は、魂の番を信じますか?」
「……先生?」
「くだらない話だと……どこぞのロマンチストがそんなことを言うのかと疑っていましたが……」
すい、と先生の指が俺の頬を撫でた。
「……出会ってしまいましたね」
心臓が跳ねた。
先生が触れたところが、熱い。
「先生、俺……」
「飲んで下さい。水無しでも飲めるものですから」
そんなこと知っている。
俺は、先生の言葉に従って、錠剤を口の中で噛み砕いた。苦みが広がる。いつだって、この味には慣れない。
薬が効いてきたのか、俺の頭はだいぶクリアになってきた。即効性があるんだな、と改めて思う。いろんな種類の制御剤があるけど、一番メジャーなこれと同じものが、今も俺のカバンの中に入っている。
「……さっきの少年は何も感じなかったのでしょうか」
ぶつぶつと独り言を言う先生に、俺は思い切って話しかけた。
「あ、あの! 俺、高坂レンって言います。今、三年で……」
「分かりますよ。名札にそう書いてありますから」
どこか冷たく先生は言った。俺はめげずに続ける。
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