1

12/17
前へ
/216ページ
次へ
 声を荒げた俺に、ソウタが慌てて言う。 「その、僕が共感したのは、子供だからってところで……」 「子供だから馬鹿にしても許されるわけ?」 「そうじゃなくって、子供にその……手を出さない先生は偉いなって……」  ソウタは頬を赤くして言った。 「だって、番うって……そういうことするんでしょ? 僕たちまだ高校生なのに、そういうのは……まだ早いよ……」 「早い……?」  なんて優等生な言葉なんだろう。  いや、当たり前の話かもしれないけれど。  この様子じゃ、ソウタはまだ未経験なんだな。俺もだけど。 「……分かった。先生の言うことにも一理あるってことか……急に怒ってごめん」 「ううん。僕は大丈夫だけど……その。先生のこと嫌いになったら駄目だよ」 「嫌いに……」  あれ?  そもそも俺、先生のこと好きじゃないんだ。  ただ、魂とか運命とか、そういうので頭がいっぱいだった。  そもそも恋していないのに、そんな相手と番うなんて……考えただけで恐ろしい。そんなの全然幸せじゃない。  どんどん自分が冷静になってきた。先生は言い方はあれだけど、間違ったことは言ってなかった。あんなにムキになった自分が恥ずかしい。 「ああもう……最悪」 「だ、大丈夫?」 「大丈夫じゃないー。もう帰りたい……」 「次のホームルームが終わったら帰れるよ」  笑顔でソウタが言った。  俺はそれに、曖昧に笑って答えた。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

938人が本棚に入れています
本棚に追加