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 俺は鞄から入学の手続きの書類を出した。提出期限はまだまだ先だけど、こういうのは早めに片付けておきたい。  先生はメモ用紙に新しい住所を書いてくれた。俺はそれを写す。 「ここ、保証人? やっぱ親か……」 「私が書きましょう」 「えっ。でも……」 「私だってレンの家族になるんですよ。それに、つがいはこういう手続きの際に認められているはずです」 「……ほんとだ。良いってちゃんと書いてある」 「書きましょう」 「……うん」  先生の綺麗な字が書類に記入されていく。何だか照れ臭い。 「判子を取ってきますから、待っていて下さいね」 「分かった」  先生は立ち上がり棚の引き出しを開けてごそごそしている。俺は埋まった書類を眺めた。何だか嬉しくなってそれを抱きしめた。春が楽しみだな。新しい土地で、新しい生活が始まるんだ。……先生と一緒に。 「おや、可愛らしいことをしていますね」  判子と朱肉を手に先生がソファーに戻って来た。慌てて書類を元の位置に戻すと、頭を撫でられる。あったかい。 「ふふ。楽しみですね」  笑いながら先生は書類に「立花」の文字を押した。これで書類は完成。後は提出するだけだ。
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