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木村は水の入ったグラスを持って来た。
そして私に差し出した。
「…ありがとう」
「…うん」
「…………」
「…………」
木村は元から自分から話すタイプではない。
私はどちらかと言うと、誰にでも気楽に話せるタイプだ。
ただ、木村には別だ。
特に私から話すことはない。
無言が気まづい…。何か話題はないか探していた。
「…木村も寝てたの?」
さっき目が合ったことを思い出した。
「いや、寝てない」
「…えっ?」
木村も寝てて、たまたま私が起きたタイミングで目が合ってしまったんだと思っていた。
「…あー、寝転んでただけ?」
それにしては距離近かったけどな、と思った。
「志津子の寝顔見てた」
「……は?」
私はまだ酔ってるのかと思った。
相変わらず木村の表情はポーカーフェイスだ。
「…………」
「…………」
そしてまた無言の空気が流れた。
ただ、さっきよりよくない感じがした。
嫌な予感だ。
このままここに居てはよくない気がした。
「…木村、水ありがとう。私帰るね」
私は直感を信じるタイプだ。
嫌な感じがしたら、そそくさと退散するべきだ。
「まだ、始発まで時間あるよ。それまで居たらいい。気とか使わなくてもいいから」
いや、気は使ってないから。
早くこの場所から無性に離れたくなっただけだ。
「タクシーで帰るし、大丈夫」
私は立ち上がろうとしたが、木村が私の腕を掴んだ。意外に力強くて驚いた。
色が白くて細身な木村からは想像出来なかった。
「いや、ここに居て」
「は?居てって言われても…」
私は少しイライラした。
頭も痛いし、木村と2人だし、やっぱりまだ眠いし、嫌な予感するし、何故か木村は帰してくれないし。
木村が少し深く息を吸ったのがわかった。
「……志津子のこと、好きなんだ」
「…………は?」
頭痛と眠気が一気に飛んだ。
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