なんでもない話

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「肌、まっしろ」 営業周りでこんがり焼けた手で、俺の首筋をなでてくる。 いまだにうっすらと欲情を漂わせて、触れてくる。 だけど俺が微かに目線を逸らすと、指は離れた。 それからまたいつもの賑やかな話が始まる……と思いきや、もうネタが尽きたのか、いきなり童話を語り出した。 おっさんが「むかしむかし~」なんて、失笑ものだ。 「キスをしたら目が覚めるって、いいラストだよな」 そう言って、湿ったキスをしてくる。 「ごめん、濡れちゃったな」 枕元のティッシュで俺の頬を拭きながら、またポトポトと俺の頬を濡らす。 俺はいいから、自分を拭けよ。 びしょ濡れでも誤魔化せないその目元を拭けよ。 そしてなんでもない話をしてくれ。 俺がリアクションしなくていい話をしてくれ。 おまえが吐き出したコーラより汚いものを、俺は何度おまえに見せただろう。 げっぷするよりみっともない姿を、何度見せてしまっただろう。 それでも側に居続けてくれるおまえに、何も返せない自分が悔しいんだ。
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