146人が本棚に入れています
本棚に追加
「肌、まっしろ」
営業周りでこんがり焼けた手で、俺の首筋をなでてくる。
いまだにうっすらと欲情を漂わせて、触れてくる。
だけど俺が微かに目線を逸らすと、指は離れた。
それからまたいつもの賑やかな話が始まる……と思いきや、もうネタが尽きたのか、いきなり童話を語り出した。
おっさんが「むかしむかし~」なんて、失笑ものだ。
「キスをしたら目が覚めるって、いいラストだよな」
そう言って、湿ったキスをしてくる。
「ごめん、濡れちゃったな」
枕元のティッシュで俺の頬を拭きながら、またポトポトと俺の頬を濡らす。
俺はいいから、自分を拭けよ。
びしょ濡れでも誤魔化せないその目元を拭けよ。
そしてなんでもない話をしてくれ。
俺がリアクションしなくていい話をしてくれ。
おまえが吐き出したコーラより汚いものを、俺は何度おまえに見せただろう。
げっぷするよりみっともない姿を、何度見せてしまっただろう。
それでも側に居続けてくれるおまえに、何も返せない自分が悔しいんだ。
最初のコメントを投稿しよう!