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鉛色の雲が、低く立ちこめている。
女心と秋の空とはよく言ったもので、今朝はよく晴れていたというのに、おやつ時にはすっかり太陽なんてどこへやらだ。
そんなことを思っていたら、カフェのテラス席に太陽が座っているのを見てぎょっとした。のんびりデニッシュとカフェラテでティータイムとしゃれ込んでいる。
どうしてそんなことをしているのさ、と聞いてみたら、
――この季節は案外そういうものなのさ。
そう言ってからからと笑った。その笑い方がいかにも太陽で、朗らかで暖かい。
とはいえ、このままでは雨が降り出して、太陽がぬれてしまわないかと妙な心配をする。太陽が湿り気を帯びたら、人々の心の中の朗らかさにも影響を与えてしまいそうな気がして。
そう言ったら、太陽は心配いらないさとばかりに大きな傘を取り出して、ぽんと開いて見せた。
傘の外側は何の変哲もないが、内側には美しい青空が描かれている。
――この傘の下なら、どこにいても僕は大丈夫なのさ。青空の下にある太陽ほど、強いものはないからね。
なるほど、太陽の言うことも一理ある。
太陽はティータイムを終えてすらりと立ち上がると、こちらに手を振って見せた。そろそろ戻らないと、日没に間に合わなくなるとほほえんで。
その日の夕焼けは、いつもよりもいっそう美しいものだったのは、言うまでもない。
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