Diver Of eLectric Field

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急いで身支度を整えると、会社に向かう。 郊外にあるオフィスには、ここから電車で四十分程かかる。 入線してきた急行列車に乗り込んだ。 ガタン… ガタン… 規則的なリズムに揺られ、沢山寝たはずなのに、眠気が襲ってくる。 そこに、私にしか聞こえない電子音と、機械音声が再生される。 ーー『通知』 公共エリアです。"DOLFiN"の接続を解除してください。 ああ、そうだった。 起動したままになっていた"DOLFiN"を停止すると、自動音声は止んだ。 "DOLFiN"というのは、 "D()iver O()f eL()ectric Fi(・・)eld"の略称だ。 和名では"電脳の海の潜水士"などとも呼ばれている。 その概念自体は、数年前に、ある論文のなかで発表された。 大まかに言うと、 「先天的に、電脳空間と意識レベルで同期が可能な人間が存在する。 その人物にとっては、電子機器の操作、プログラムの修復などは、現実世界でコップを掴むのと同じくらい容易い」 確か、そんな内容だったと記憶している。 "DOLFiN"というのはその能力、またはその使用者を意味する。
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