Diver Of eLectric Field

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課長はわざとらしく、深い溜息を吐くと、 「そんなだから…」 チーム内に響き渡る声で、怒鳴り始めた。 私、さっき謝らなかったっけ。 昼前の会議資料、確認したい。 ぼんやりと、目の前で怒鳴り続ける上司に、適当に相槌を打つ。 「おい、聞いてる!?」 「えっ、はい」 一際大きい声を出され、私は意識を目の前の人物に引き戻す。 「黒崎が役に立つのって、"DOLFiN"だけじゃん。会社に貢献しろよ」 「あ… はい」 「じゃあ、システム開発部から依頼が来てたから、今から行って」 時計を見る。 会議の時刻が迫っていた。 「課長、私、十一時から会議が」 課長も腕時計に目を落とし、舌打ちする。 「会議は、他の奴に行かせれば良いだろ」 「でもーー」 私の初プロジェクトなんです、 という理由は、私事過ぎるかなと言葉を噤んだ。 「ーーでも、前回の作業から三日経っていないので」 "DOLFiN"を使った大規模作業は、使用者の健康を考慮し、原則三日のインターバルを設ける事が義務付けられている。 しかし、 「前回は、ツールの不具合を少し修正しただけだろ。大規模作業じゃないから、問題無い」 大規模作業か、否か。 その定義は、現場判断であるのが現状だ。 結局私はその決定を、渋々了承した。
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