1人が本棚に入れています
本棚に追加
裏切り者と呪われし者
落ち葉のじゅうたんの上に一糸まとわぬ青年が横たわっている。小柄で細い体には生々しい傷跡やあざが目立つ。このまま放っておかれたなら、その肉体は土に還る運命を免れないだろう。彼の名はグロウという。
グロウは愛する妹を思い浮かべた。
こんな山の中でくたばってたまるか。僕が死んだら誰がルィスを救うんだ。
自らを鼓舞して立ち上がろうと試みるも、腕を動かすことさえ叶わない。まだ日は出ているものの、冷たい秋の風も容赦なく吹きつける。
……誰か倒れ……。
朦朧とする意識の中で、グロウは男の声を聞いた。何人かの足音が近づいてくる。助けを求めようにも声すら出せない。
……まだ生きて……。
グロウは誰かに抱きかかえられた。
助かった――。
彼の意識はそこで途切れた。
最初のコメントを投稿しよう!