裏切り者と呪われし者

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 奥の部屋だけは木製のドアが据え付けてあった。連れの男がノックすると中から「入れ」と低い声がした。待っていたのは大柄な髭面の男で、グロウは彼の前に座るよう椅子を勧められた。 「何とか命拾いしたみてえだな」 「はい、おかげさまで。ありがとうございます」  男の酒臭い息に戸惑いながら、グロウは深々と頭を下げた。 「オレはセヴァーダ。おまえ、名前は?」 「僕はグロウといいます。グロウ・セリオです」 「どこに住んでる? フェシャードか?」 「いえ、ガロアールです。フェシャードで働き口を探そうと出てきたところを、追い剥ぎに襲われたんです。ほとんどお金を持っていませんでしたから、盗られたものはないも同然ですが……」  フェシャードは多くの物や商人が集まる商業都市で、地方から出稼ぎに来る者も多い。グロウが襲われたのはフェシャードへ向かう山道でのことだった。 「そうか、そいつは運がなかったな。オレの縄張りで追い剥ぎとはいい度胸だ。見つけたらとっちめねえとな。……まあともかく、それなら丁度良かった。おまえ、ここで働くつもりはねえか?」
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