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グロウにとっては願ってもない申し出だったが、どんな仕事かもわからないのに返事ができるはずがない。おまけに、目の前のセヴァーダを筆頭に、ここにいる人々はどうも堅気の人間とは思えない。答えられないでいると、セヴァーダはグロウのとまどいに気がついたらしかった。
「ああ、オレたちはアレだ。早い話が強盗団だな。だがな、誰彼構わず襲うわけじゃねえ。オレたちが狙うのは汚えやり方で儲けてる商人や、賄賂や不正で私腹を肥やす役人どもさ。まあ、その稼ぎを一般人にばらまくわけじゃねえから、義賊を名乗るつもりはねえけどよ」
強盗団と聞いてグロウは目を伏せた。いくら金が必要だといっても犯罪に関わるのは気が引ける。
「まともに働くより稼ぎはいいぞ。それは約束する」
しかし、妹のルィスのために大金を稼がなければならないのも事実だった。たとえ、悪事に手を染めてでも。
「もし嫌だってんなら、悪いが、生かして帰すわけにはいかねえ。顔を見られちまったからな」
どうやら選択の余地はないようだ。生唾を飲み込み、覚悟を決める。
「助けていただいた命です。あなたに忠誠を誓いましょう」
グロウは椅子から立ち上がって跪き、頭を下げた。抵抗があるのは間違いないが、セヴァーダに恩義を感じているのも嘘ではなかった。
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