裏切り者と呪われし者

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「そうか! よしよし、まあ、顔を上げて座ってくれ。……それで、何も強盗を手伝ってくれってわけじゃねえんだ。悪いがおまえじゃ戦力にならねえだろうしな。頼みたいのは飯の支度や馬の世話なんかだ。できるか?」  それを聞いていくらか安心したグロウは、頬を緩めて「はい」と頷いた。 「そういう仕事を任せてた奴が病気でころっと死んじまってな。おまえが入ってくれると助かるぜ。ソージャ、仕事はおまえから教えてやってくれよな。それから、腹が空いてるだろうから、何か食わせてやれ」  看病してくれた男が返事をした。グロウが立って振り向くと、彼は右手を差し出した。 「ソージャだ。よろしく」 「よろしくお願いします」  握手を交わし、再びセヴァーダに向き直る。 「あの、セヴァーダさん……」 「グロウ、お頭って呼ぶんだ」  早速ソージャから指導を受けた。セヴァーダはニヤニヤして気にしていない様子だ。 「あ、すみません……それでお頭、一つお願いがあるんですが」 「なんだ?」 「実は、ガロアールに妹がいるんですが、体を壊してずっと病院に入ってるんです。お金を支払いに行かなければなりませんし、たった一人の家族ですから、たまには顔を見せに行ってやりたいんですが……」  ガロアールはフェシャードの北方に位置するのどかな田園地帯である。フェシャードからは馬を飛ばせば一時間程度、歩いても一日はかからない。グロウはそこの出身だった。 「ああ、もちろん構わねえ。馬も貸してやるから、時間があればいつでも行ってこい」  セヴァーダは案外人情家なのかもしれない。グロウは感謝を述べた。  こうしてグロウは、強盗団セヴァーダ一家の一員となったのだった。
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