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半年もして暖かくなってくる頃には、グロウもすっかり馴染んでいた。
その日はソージャと二人、フェシャードの市場まで買い出しに出かけ、情報も集めてきた。街の噂、人々の世間話などから襲撃の目標が選ばれることも少なくはない。情報収集はソージャとグロウに任された重要な任務なのである。
フェシャードは山間部の商業都市で、南北を結ぶ街道と東西を結ぶ街道が交差する、交通の要衝でもある。中心部にはフェシャード侯が暮らす美しい宮殿の他、大型の商店や立派な宿屋が建ち並び、国内でも指折りの大都市として知られている。
そうして、光が差すところに必ず闇が存在するように、富を狙う強盗団やごろつきが多数存在していた。セヴァーダ一家はその代表格である。
門を抜け、郊外へ出た二人は馬車を引き、フェシャードの北側に面するウルソ山脈へと向かった。セヴァーダ一家の隠れ家はその山中にある。整備されていない道の先なので、一般人や憲兵が踏み込んでくることはまずない。
「妹さん、まだよくならないのかい?」
山に入り、人目を気にする必要がなくなったところでソージャが聞いた。
「うん……そんなに簡単に治るものじゃないんだ」
「若いのに気の毒だな。どんな病気なんだい?」
「それが、病気じゃなくて……」
グロウは話しても良いか迷いながらも、正直に打ち明けることにした。誰かに聞いてほしいという思いは常にあった。
「ルィスは……妹は、呪われてるんだ」
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