裏切り者と呪われし者

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 遠くで獣の鳴き声がした。どことなく不吉で気味の悪い声だった。 「呪われてる? 一体誰に?」 「僕の父さんが殺した魔術師だよ。……父さんは名うての賞金稼ぎだったんだ。怪物の退治から悪人の生け捕りまで、人が避けるような仕事でも平気でやってのけた。でも、その魔術師には手を出すべきじゃなかった」  ソージャは黙って聞いている。 「あちこちで悪さをしている魔術師で、強大な魔力を持っていた。父さんは不意を突いて致命傷を負わせたものの、呪いをかけられてしまったんだ。魔術師は息絶え、報酬は手に入れたけど、僕たち家族が失ったものはあまりにも大きかった。父さんはそれ以来生気を失ってしまって……」 「妹さんまで呪われてしまったってことかい?」 「うん……ルィスは死神の姿が見えるようになってしまったんだ」  可哀相なルィス。話しながらグロウは胸を痛めた。 「死神、か」 「うん。死期が近づいた人の側には必ず死神がいるらしい。色々な姿をしているけど、どれも恐ろしいものらしくて。おまけに両親も相次いで亡くなって、ルィスは精神が参ってしまったんだ。それで、ガロアールの病院で面倒を見てもらってるってわけさ。母さんの知り合いがやっているところだから、少し負けてもらってるけどね」 「そうだったのか……でも、魔術師が死んだら、その呪いも解けるんじゃないのかい?」  ソージャのもっともらしい問いに、グロウは首を横に振った。 「残念ながらそうはならなかった。詳しい人によれば、呪いを解くにはその魔術師と同等かそれ以上の魔力を持つ人に頼むしかないんだって。やっとのことで解呪を頼めそうな魔女を見つけたんだけど、随分ふっかけられてさ」 「それで大金が必要ってわけなんだね。いくらくらい?」 「五百万ペタラだって」  ペタラはこの国の通貨単位で、五百万ペタラあればそれなりの家が一軒建てられる。 「五百万か……それはちょっと気が遠くなるね」  一回の襲撃でグロウがもらえる分け前は、良くて金貨三枚、つまり三万ペタラである。それより少ないことの方が多いので、五百万も貯めるのは相当な時間がかかりそうだった。 「お頭も気前よく使っちゃう人だし、オレも力になれそうにない。すまないな」 「ソージャが謝ることじゃないよ。気にしないで」
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