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この場合、どうすればいいんだろうか?
迷った挙げ句、ストームには悪いけどセイクの味方に付く事にした。
「お姉ちゃん怖いー」
「もぉいけないお兄ちゃんね」
セイクに駆け寄った俺は、甘えるように後ろへ避難。後にストームへ向かって、こっそり両手を合わせた。
「あんたは手を出すのが早いのよ」
「あんたより美人に仕上がっとるのが悪っいたぁ!」
今度は雑音を省略させてもらったが、ウォーターに注意を受けたストームの余計な一言により。会場に景気の良い音が鳴り響いたと共に、叩かれた尻を右手で押さえるストームが痛々しかった。
「そんなに上手く化けれてんの?」
「あら、鏡を見て来なかったの?」
「違和感しかなくってさ……」
「可愛く仕上がってると思うよ」
周りからどう見られてるのか知らないけど、ウォーターより美人って事は無いと思う。
慣れない化粧に、違和感のあるウィッグを崩さないよう気を付けて触れる俺にウォームが言った。
「ウォーム様も口説きたいと思いました?」
「危うくね」
「お世辞でも嬉しいよ」
口説き慣れてもなければ、褒め慣れてもいない俺は、恥ずかしくなって視線を隠すように赤頭巾を目深く被ってのご返答。
ーーだって俺、今は男だし……。
女装が好きという訳ではない。
複雑な心境の中で、肩に乗ってきた鳳炎に一瞬気が逸れるが、俺の前に近付いて来たウォームが跪いて言う。
「僕にお茶を入れさせくれないかな?」
「へ?」
「セイクの腕に比べたら劣るけど、悪戯されるのは勘弁してほしいからね」
要するに、茶菓子を持参してから紅茶で勘弁してほしい。という事なんだろうか?
まるで王子様の如く、跪いたまま手を差しのべ来たウォームに戸惑ったものの。ストームの鷲掴みに比べたら上品過ぎる程丁寧だし、どうすれば良いのか迷った挙げ句に、差し出されたウォームの右手に己の右手を乗せた。
「さすが施設内きってのナイト様ね」
「誘い方に品があるわぁ♪」
「そう言って、カメラ連写すんのはやめぇな。雰囲気ぶち壊しやで」
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