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「それで来るのが遅かったのね」
「ごめんなさい。でも良い写真が撮れたの! 見て見て!! 奇跡の1枚」
ウォーターが上機嫌でカメラのデータを相手に見せると、写真を見たセイクがおしとやかに「まぁ」と声を上げた。
俺も此処に来る前に見せてもらったけど、グレイが側に居なくても女の子らしい1枚が撮れて複雑な気持ちだったりする。
「ワイにも見せてぇな」
「僕も興味があるな」
「だぁめ、現像してからのお楽しみ!」
「ねぇ、ウォーター。去年の写真データは、それに残って無いの? 俺、カインドの女装バージョンが見てみたいな」
「あるわよ。グレイは見たことあるわよね?」
「はい。移動中にたまたまね」
「綺麗だった?」
「うん。でもどっちかと言うと、可愛いと言った方が正解かな」
「去年は魔女っ子スタイルにしてあげたの。ほら! 可愛いでしょ」
そう言って、ウォーターが俺に去年撮ったカメラのデータを見せてくれたのだが……。その、何と言うか。魔法使い違いのような気がしたぐらいのミニスカートやロッドを拝見して、同情から苦笑いしか出来なかった。
「フレムもなかなかのもんやで」
「ありがと」
しかし、男に戻った身だけに素直に喜べず……。
困った表情でウォームが入れてくれた紅茶をストレートで口にしたところで、ラーリングが会場入りした。
「お待たせ!」
仕事の疲れを感じさせない明るい声で言うラーリングに、皆が労いの言葉をかける一方で、俺は敢えて静観を選んだ。ーーと言うのも、声をかけてノリノリな様をラーリングに見せたくなかったからである。
「あれ? フレムさんは?」
俺が参加するお茶会にしか顔を出さないラーリングは、周囲の視線を追って現状把握。
何か言わなきゃと思うけど、持ってたカップをテーブルに置いてーー。
「すみません、お名前をお聞かせくださいませんか?」
ご丁寧に質問してきたラーリングに向けて、席を立った俺は、スカートの裾を気持ち持ち上げるような仕草を加えて答える。
「赤ずきんと申します」
「お隣宜しいですか?」
「勿論」
「嬉しいな♪ 僕が男の子って分かるぐらい可愛い子に変身するなんて。フレムさんの魔法は凄いや」
ーーはい?
全く驚かないどころか、悪のりしてくれるラーリングは、どうやら俺が魔法を使って仮装していると思っているらしい。
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