4/お茶会の開幕

4/5
前へ
/19ページ
次へ
「それで来るのが遅かったのね」 「ごめんなさい。でも良い写真が撮れたの! 見て見て!! 奇跡の1枚」  ウォーターが上機嫌でカメラのデータを相手に見せると、写真を見たセイクがおしとやかに「まぁ」と声を上げた。  俺も此処に来る前に見せてもらったけど、グレイが側に居なくても女の子らしい1枚が撮れて複雑な気持ちだったりする。 「ワイにも見せてぇな」 「僕も興味があるな」 「だぁめ、現像してからのお楽しみ!」 「ねぇ、ウォーター。去年の写真データは、それに残って無いの? 俺、カインドの女装バージョンが見てみたいな」 「あるわよ。グレイは見たことあるわよね?」 「はい。移動中にたまたまね」 「綺麗だった?」 「うん。でもどっちかと言うと、可愛いと言った方が正解かな」 「去年は魔女っ子スタイルにしてあげたの。ほら! 可愛いでしょ」  そう言って、ウォーターが俺に去年撮ったカメラのデータを見せてくれたのだが……。その、何と言うか。魔法使い違いのような気がしたぐらいのミニスカートやロッドを拝見して、同情から苦笑いしか出来なかった。 「フレムもなかなかのもんやで」 「ありがと」  しかし、男に戻った身だけに素直に喜べず……。  困った表情でウォームが入れてくれた紅茶をストレートで口にしたところで、ラーリングが会場入りした。 「お待たせ!」  仕事の疲れを感じさせない明るい声で言うラーリングに、皆が労いの言葉をかける一方で、俺は敢えて静観を選んだ。ーーと言うのも、声をかけてノリノリな様をラーリングに見せたくなかったからである。 「あれ? フレムさんは?」  俺が参加するお茶会にしか顔を出さないラーリングは、周囲の視線を追って現状把握。  何か言わなきゃと思うけど、持ってたカップをテーブルに置いてーー。 「すみません、お名前をお聞かせくださいませんか?」  ご丁寧に質問してきたラーリングに向けて、席を立った俺は、スカートの裾を気持ち持ち上げるような仕草を加えて答える。 「赤ずきんと申します」 「お隣宜しいですか?」 「勿論」 「嬉しいな♪ 僕が男の子って分かるぐらい可愛い子に変身するなんて。フレムさんの魔法は凄いや」  ーーはい?  全く驚かないどころか、悪のりしてくれるラーリングは、どうやら俺が魔法を使って仮装していると思っているらしい。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加