1/お誘いを受けて

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1/お誘いを受けて

「フレム」 「ん?」 「フレムは、ハロウィンって何だか知ってる?」  ある日のティータイムでの事だ。  紅茶をティーカップに注いでいたグレイが、絵本を眺めていた俺に質問してきた。 「突然どうしたの?」 「それがウォーター様からの伝言で、今度のお茶会はハロウィン形式にするから仮装して来てほしいって言われたんだよ」 「へー、なるほどね」  ウォーターと言えば、施設の中でもコスプレ好きで有名な水の守護者だ。普段コスプレを他人に強要する事は無いけど、イベントは別らしい。  眺めていた絵本を閉じると、グレイが茶菓子と共に紅茶が注がれたティーカップを俺に差し出して少々困った様子を見せる。 「グレイは、ぶっちゃけ仮装すんの嫌なの?」  「そう言うわけじゃなくて。ハロウィンだから仮装する理由がよく分からないと言うか。ハロウィンなんて聞いた事ないもんだから、どんな仮装をすれば良いのかも分かんないんだよね」 (そう言えば、この世界に季節イベントはあるんでしょうか?)  グレイの質問に、テレパシーで素朴な疑問を口にする鳳炎。言われてみればグレイが住む世界に四季は無く。一定の気候に保たれ、空から降ってくるとしたら雨か雷ぐらいだ。 (聞いてみようか?)  俺は、鳳炎の疑問も尤もだと思い。  アイコンタクトを取った後に、向かい側に座ったグレイに尋ねてみる。 「因みに、この世界にはイベント的なもんはないの?」 「イベント?」 「例えば収穫祭とかさ」 「収穫祭って、無事に作物が実ったお祝いの事を言うんだっけ? 昔はしてたみたいだけど、今殆どがハウス栽培で一年中採れるから。地域興し程度の催しものとしてはあるよ」 「俺が前に居た世界もハウス栽培とかしてはいるけど、基本的には自然任せだから。実りの秋に収穫祭が集中するんだ」 「じゃあ、その内の一つがハロウィンってこと?」 「ちょっと違うかな。俺が居た日本の文化じゃないから、知ってる限りの知識だけど……。昔、ケルト人と言われる民族がいて。10月31日が1年の終わりとして定めていた時があったんだって」 「今は違うの?」 「うん。でも10月31日は、今でも死者が彷徨う日として有名なんだ。元々はご先祖様を敬う祭だったらしいけど、今は仮装する事で、あの世に連れていかれないようにしてるらしいよ」
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