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3/仮装の定番は赤ずきん?
一方その頃ーー
セイクの施設に到着するや否や。
ウォーターに拉致られた俺とグレイは、用意された部屋で仮装の準備となった。
「これがグレイ君ので、これがフレム君のね」
そう言って、部屋に前もって置いていた紙袋を俺達に渡すウォーター。着替えるだけなら、手助けが無くても問題なさそうだけど……。
「ウォーター」
入っていた赤いフードの上着やフリルの中着を引っ張り出した俺は、複雑な表情を浮かべた。
「これはーー」
「緑の民に伝わる童話を元に作成してみたの」
「へ~……」
明らかにレディースですけどね。
チラリと紙袋の中身を確認しているグレイを見れば、獣の耳や尻尾を引っ張り出している。
「ウォーター様。これはアナトですか?」
「私達の世界では、狼と呼ばれる動物よ。家畜で飼われてる牛や羊と同じ、獣と表現すれば分かるかしら? 物語では人間を襲うのよ」
すると動物とは何たるかの前に、己の役割分担を理解したんだろう。俺が引っ張り出した衣装を見たグレイが、ウォーターに質問を重ねる。
「じゃあフレムの引き立て役ってことですか?」
「あら、狼も立派な主役よ。彼女を襲っていいのは、狼だけなんだからね」
ーーいや、彼女って……。
まだ着てもないのにウォーターは気が早すぎる。
「因みに鳳炎ちゃんは、狩人の帽子とマントを羽織ってもらうわ。勿論そのチビドラゴンのままでね」
(わざわざご用意してくださったんですか?)
「これぐらい朝飯前よ♪」
ウォーターは、俺の肩から椅子の背もたれの縁へと移動した鳳炎の頭に緑のハットを被せ、丈の短いマントを羽織らせると、外れないようリボン結びを行った。
「ん~……。ハットに羽根を付けたいところね」
(私の羽根で良ければご使用下さい)
「ほんと? 有難いわ」
鳳炎は、毛繕いするが如く慣れた口裁きで小さな羽根を取ると、ウォーターに渡してハットに飾ってもらった。
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