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4/お茶会の開幕
「おっそいなぁ」
「何してるんだろうね」
一足先に珈琲を入れて貰い、集合場所で雑談を交わしていたストームがぼやくと、気の長いウォームも心配になってか同意した。
「セイク、見てきたらどうや? 幾らなんでも遅すぎるで」
「そうね」
しかし、セイクが椅子から立ち上がると同時にひょっこり顔を出してきたのは、狼の仮装を済ませてきたグレイだった。
「お待たせしましたぁ。トリック・オア・トリート!」
「遅いで、着替えるだけじゃ済まへんかったのか?」
「フレムの方がね」
先陣きって現れたグレイにストームが文句を言うと、後から現れたウォーターとその後ろに隠れている俺を見た。
「ごめんなさい、やり始めたら夢中になっちゃって。ほら、フレム。頑張って」
けど赤い頭巾を深々と被った俺は、沈黙の末に硬直。おまけにスカートの布地を握りしめて俯いた事もあって、ウォームとストームが心配し始める。
「仮装なんだから、思い詰めなくても大丈夫だよ」
「面白メイクでもやられたんか?」
むしろその方が気が楽だったかもしれない。
ストームが手を伸ばして来たので、咄嗟にウォーターの後ろに隠れて遮った。
でも、これ以上相手を焦らすように恥ずかしがってばかりでは、結果肩透かしを食らわすんじゃないかとマイナス思考を働かせた俺は、思いきってハロウィン定番の決め台詞を気持ち高めの声で口にしてから前に出る。
「Trick or Treat! お菓子をくれないと、悪戯しちゃうからね」
その間に深々と被った赤ずきんを少し持ち上げて二人に顔を見せると、暫し沈黙した後にストームが俺の両肩を鷲掴みにして言う。
「フレムならかまへん!」
ーーばしんっ!!
間髪無く雑音が入って悪いが、決して俺がストームに平手打ちをした音てはない。
後頭部を痛そうに両手で押さえたストームは、バット程の大きさを誇る白いハリセンを担いだグレイを睨んだ。
「何すんねん!」
「狼の僕より狼の顔をしてましたよ」
「せやかて叩かんでもえぇやろ?」
「わたしが許可したのよ」
そう言って、髪を書き上げて強気に出たのはセイク。
ーー目がマジだ。
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