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冷蔵庫から酒と冷凍食品を選んでいたその時、インターフォンが鳴る。
案外早く帰って来たなと思い、古谷はすぐに玄関まで歩み寄る。
「おい佑香! 仕事行くなら朝の時点で言えよ! とりあえず5万……」
怒鳴りながら扉を開けた古谷。しかし、目の前に立っていたのは彼女の佑香ではなく、見覚えのない女だった。
「はぁ? 誰よあんた……部屋、間違えてねぇ?」
「……娘の、父親を捜しているんです」
その女は妙な事を言った。
外は大雨なのに傘もささず、びしょ濡れの女。年齢は古谷と同じ20代半ばくらいか、顔は前髪のせいでよく見えないが、なんというか気味が悪かった。
「何言ってんだあんた……いかれてんのか」
「……この雨が弱まるまでで構いません、お部屋の方に上げていただけませんか? もちろん、私にできる事ならお礼は致します」
「はぁ? なにを図々しい事を……」
女はとんでもないことを言い始めた。見ず知らずの古谷の家に、びしょ濡れの自分を上げろと図々しいことを言い放ったのだ。
このまま追い返してやろうと、古谷は女を突き飛ばそうとする。だが、その時、濡れた服から女の白く艶めかしい身体が透けていることに気付く。
そこで古谷は、一瞬で下衆な考えに至り、追い返す事を躊躇う。
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