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「あなたの事だから、犯した女の名前なんて覚えていないだろうね。それとも、あの頃から随分と私の身体も成長したから、気付かないのかな」
押し倒されたまま、女は古谷に問いかける。そして、前髪が乱れ、顔を露にした女を見て、古谷は過去に犯したある少女の姿を思い浮かべる。
「……お前、藤倉か」
押し倒されたまま藤倉 唯は、黙って微笑んだ。
「今更何しに来た……あんな昔の事、まさかほじくり返そうってわけじゃねぇだろうな」
唯に跨りながら、古谷は首元に手を置いて脅したつもりだった。けれど、結衣の表情は一切変わらない。
「まさか、もう昔の事はいいの。だからさっき言ったじゃない? 私、娘の父親を捜してるって。それに協力してほしいの」
「はぁ? それが俺に何の関係があるってんだ? お前の娘なんて知ったことか」
「だってあの時、あなたたちが見捨てたお腹の子だよ? お父さんに見捨てられたままじゃ可哀想じゃない」
古谷は驚愕した。強姦の末に孕んだ子供など、とっくに中絶したものだと思っていた。けれど、唯はその忌々しい子を産み、育てていた。
それを聞いて、古谷は目の前の結衣に恐怖を感じ始めた。もしかしたら、自分と自分が犯したこの女の子供が、存在しているかもしれないと考えると、とてつもなく悍ましく、忌々しい事のように感じられたのだ。
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