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「い、今更そんな事知るか! それに、俺は絶対に認知なんかしねぇぞ! 俺は知らねぇ!」
「古谷くんの意見なんて聞いてないよ。ただ、父親捜しと、そしてあの時の私の痛みを知ってくれればそれでいいの」
狼狽える古谷に、唯は隠し持っていたナイフを取り出し、古谷の首元に押し付ける。
首元の皮膚がさけ、血が垂れて唯の頬を濡らした。
「ひっ……」
「だって家族になったら、愛も痛みも共有して分かち合うのが当然でしょ? だから、あの時の私の痛みを古谷くんにも知ってほしいの。他人の痛みを知らない悪いパパなんて、娘は望んでないから」
ナイフが首元へ食い込んでいき、血が流れ出す。
「ま、待て……分かったから、殺すな……殺さないでくれ」
古谷は両手を上げ、唯の上から身体を起こす。
突如訪れた死の予感に、古谷は柄にもなく怯えていたのだ。
「古谷くんがあの時、私にしてくれたこと覚えてる? 古谷くんは私の身体にある穴という穴に色んなものを突っ込んで、悶える私を見てゲラゲラ笑ってたよね。鉛筆、ハサミ、コンパス……ああ、吸いかけの火のついた煙草もおしりとアソコにも突っ込んでくれたよね。あれからずっと血尿が止まらなくて、トイレもすっごく痛くて大変だったんだから」
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