第4話 香川 幸也の尻尾切り

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「用ならちゃんとあるよ。娘の父親を捜しているの」 「はい? 逸れたのならそれこそ交番にでも行ったらどうです。警察くらい呼んで差し上げますよ」  香川は再び携帯電話を開き、警察を呼ぼうとする。 「その必要はないよ。だって父親はあなたたち3人の中の誰かだもの」  香川の手から、携帯電話が滑り落ちた。 「……一体、何を仰っているのやら」 「忘れた? あなたが10年前に犯した罪を。藤倉 唯を強姦した挙句に妊娠させ、そしてあなたたちは逃げた。『蜥蜴の尻尾切り』みたいにね」  唯の言葉に、香川は一瞬、動揺したが、再び落ち着きを取り戻し、落とした携帯電話を拾い上げる。 「知りませんね。これ以上何か言うのなら本当に警察を……」 「……奥さんと娘さん、今頃は飛行機で空の上だと思ってる? 違うよ、彼女たちは飛行機になんて乗っていない。どこへ行ったと思う?」 「なんだと?」  香川の表情が一変した。  嫁と娘の旅行の事を言いふらした覚えもない。なぜ、この女がそれを知っている? 「雨も強くなってきた。とりあえずこの豪邸の中に入れてくれない?」  嫌な予感がした。  唯をこのまま帰せば、何か取り返しのつかない事が起きる……そんな不安もあってか、香川は唯を家に入れた。     
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