第4話 香川 幸也の尻尾切り

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第4話 香川 幸也の尻尾切り

 香川 幸也は、3人の中では最もまっとうな生活を送っていた。  大学を卒業し、一流企業に就職。既に結婚もしており、娘も一人儲けている。  あんな過去を持ちながらも、彼は公私共に充実した生活を手に入れていた。  23時ごろ、雨の中、香川は自宅へと帰宅する。  嫁と娘は海外旅行に今日向かった。香川は仕事が立て込んでおり、急遽キャンセルすることとなり、今夜はこの家に1人である。  食事は外で済まし、明日に向けてゆっくりと休もうと考えながら家の前までたどり着く。  すると、玄関の前に見覚えのない女がずぶ濡れになりながら立ち尽くしていた。 「あら、お仕事ご苦労様。随分と遅いんだね」 「……どちら様でしょうか」  若い女だった。香川と同じくらいの年齢だが、随分と落ち着いた印象の女。 「それに、奥さんとお子さんは出掛けているのかな? 随分と寂しい夜だね」 「……用が無いのなら、お引き取りいただけますか? 警察を呼びますよ」  女の言葉に香川は耳を貸さなかった。  面倒事は御免だ。こういう輩は相手をせずさっさと警察に引き渡してしまおう。  そう思い、香川が携帯電話を取り出した瞬間、女が口を開く。     
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