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第5話 パパの尻尾切り
連日の大雨も止み、快晴の日のある午後。
都内の交番に、薄汚れた箱を持った1人の少女が現れ、こう言った。
「すいません、お父さんを捜しているんですが、ここでお願いできますか?」
「ん? 迷子かな? 君とお父さんのお名前を教えてもらっていいかい?」
交番の警察官は、少女に優しく問いかける。
「藤倉 蘭です。お父さんの名前は……分かりません」
「分からない?」
警察官は困惑する。父親の名前が分からなければ捜す手間も増えるし、まず娘が父親の名前を知らないなんてことがあるのかと。
「お父さんが誰だか、分からないんです。だから、『これ』を持って検査をお願いしなさいって……お母さんが」
「えーっと……これは、何かな。随分と汚れているけど」
そう言って、少女は警察官に箱を手渡す。
所々が赤黒く汚れ、重量もそれなりにある箱。
警察官は、その箱を何の疑いも無く開く。
「う、うわああああああああああ!」
警察官は驚きのあまり箱を床に落とし、その中身が散乱する。
「き、君……これは」
「パパたちの精巣と、ママの卵巣です。これで本当のパパを教えてもらいなさいって。それに、『これ』が無ければ、もう私たち以外の『偽物の家族』を産むこともできないから、みんなずっと一緒だよって」
交番の床に転がっていたのは、赤黒く汚れた人間の『精巣』3つと『卵巣』1つ。
それを拾い上げた、少女は言う。
「私のお父さん、知りませんか?」
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