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カン、と木と木が打ち鳴らされる音が部屋に響き渡った。
「判決、極刑。善人更生に処す」
もごもごと口を動かしながら、なんとなく聞き取りづらい暗い声で下された判決。法廷内の人がどよめく。被告人は顔を上げて判事の顔を見た。判事はつらつらとまだ言葉を続けていたが、それはさして大きな問題ではない。
極刑。その言葉がぐるぐると彼の頭の中を回っていた。
近年の日本では凶悪犯罪が増加し、それに伴い刑務所の収監数も増えた。もはや空いている場所がないほどだった。しかし、時の法務大臣は捺印を渋り、更に、現代の人権問題として諸国から死刑廃止を求められている。
そこに差した希望の光。それが善人更生だった。善人更生は今や日本の極刑となっているのだ。
(……クソッ)
俺は舌打ちをしたい気落ちをなんとか堪えながら法廷を出た。女を犯して殺した罪で善人更生だなんて。たったの3人じゃないか。そう思うが、あまり喚くと情状酌量の余地がなくなる。だからこそ黙って俯いていたのだ。だが判決は下った。もはや覆りようもない。
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