第二の性

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side蒼 今7:30だからあと10分くらいかな。 一縷(いちる)の迎えを待つ僕、東条蒼(とうじょうあおい)。高二。男で、β。 国内で屈指の大企業、東条ホールディングスは僕の父の会社。 中学までは、毎日送迎車で通学していたが、高校生になり、送迎車での通学は恥ずかしかったから、入学して1週間で送迎車での通学はしたくないと両親に直談判した。 子供の頃に誘拐されたことがあるため、両親的には送迎車での通学をしてもらいたいらしい。いつまでも僕は子供じゃないんだ。 そこで、両親から信頼されている一縷と一緒に通学するならどうかと代替案を伝えると快諾してくれた。 一縷には事後報告になってしまったが、僕のお願いを断ることは今までなかったから、きっと大丈夫だろう。早速SMSで一縷に報告すると、一縷も快諾してくれた。 一縷こと、立華一縷(たちばないちる)とは、幼稚園からの付き合い。 家も近所だから、小さい頃から家族ぐるみの付き合いがある。 小学校に上がってすぐくらいに、僕が誘拐された。 多分、スタンガンで気絶させられたんだと思う。その時の記憶がないから何とも言えない。 連れて来られたのは、どこかの倉庫だった。 すごく埃っぽくて、息苦しかった。どれくらいその場所にいたのだろう。犯人を刺激しないように静かにしていたら、急に犯人が苛立ち始めた。 身代金を受け取りに行った仲間からの連絡が途絶えたらしい。 隠れてやり過ごそうと思ったのが裏目に出た。犯人の目に留まってしまった。 犯人がゆっくりした動きで僕の方に近寄る。僕は怖くて後退る。その攻防戦が長くは続かなかった。 壁に背中が当たった。逃げ道はない。右も左も大きな箱が置かれている。正面には犯人がすごい顔で僕を睨んでいる。一瞬の隙をついて逃げようとしたが、子供の考えなんて単純である。 犯人に突き飛ばされて頭を打った。痛さに悶えていたら犯人にマウントを取られた。 驚いて犯人を見た時、首に何かが纏わりついた。犯人の手だった。首を絞められていた。ぎりぎりと音がしそうなくらい、すごい力で絞め上げてくる。呼吸ができない。意識も飛びそう。 そんな中思ったのは、一縷のことだった。 死ぬなら、最後に一縷の笑顔が見たい。一縷に会いたい。 意識はそこまでだった。
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