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やっと終わる、そう思った矢先、議長が口を開く。
「戦闘支援AIはどうしたのかね。」
「ここにいます!」
俺は胸ポケットから、メモリーカードを取り出した。
「早くそれを言わんか!!」
係官が慌てて飛んできて、俺の手からさっと引ったくる。そして、何の装飾もない壁をトンと軽く叩くとスリットが現れ、メモリーカードを呑み込んでいった。たちまち中央の壁がスクリーンになり、メモリーカードのデータから再構成されたエミリーの擬似人格が現れた。
「おっはー!ボス」
状況をまだ理解していないエミリーは、俺の顔を見つけるなり、屈託のない笑顔でそう言った。どよめきではなく、一斉に失笑がもれる。
今度はエミリーに説明を求め、再び質疑が繰り返された。
得られた状況は、俺の時と大差がないようだった。相手に通信を呼びかけた時の周波数帯など、具体的なより細かい情報は分かったものの、だからと言ってそれでより状況が明らかになったわけではなかった。
議長が雛壇の左右の長老たちに頷いた後、
「ご苦労だった。もう退出してよろしい。帰りにワークショップによりたまえ。この子の褒美に新しい義体を手配しておく。」
スリットから再び吐き出されたメモリーカードと<引換券-番号0909>と書かれた札を受け取り、長老たちに俺は4本の腕で自分の胸を叩いて敬礼し、会議室を後にした。
長く辛い時間ではあったが、このお陰で、エミリーには新しい義体が無料支給されることになった。
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