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1-6 エミリーの復活
1-6 エミリーの復活
「早くエミリーに新しい義体を与えたい…」
もう昼だというのに、メシも食わずにワークショップに向かう。そんなに長い距離ではないはずなのに、今の俺にはマラソンのように長く感じる。
街も軍務局のビルと同様に、好き勝手に増改築を繰り返した結果、パッチワークのようなツギハギ感に加えて、迷路のようになっており、真っ直ぐ進むとすぐに突き当たってしまう。それがこの街の防御性を高めていると言うのだが、果たしてどうだか。このような街にわざわざ装甲歩兵で肉弾戦を挑んでくるとは、俺にはとても考えられない。ゴキブリトンボ(メガネウラ)のように上空から狙うであろう。
やっと道の先にワークショップが見えてくる。さらに少し小走りになって、ひたすら急ぐ。でも、ドアは閉まっていた。目の前に立つと小さな貼り紙がある。
「ん~、昼休み!………」
仕方がないので、近所で昼メシを摂る。
「大盛りって言っただろ! これでは午後の仕事になんないよ! ウチは力仕事なんだよ!」
飯屋ではいけすけないオバはんがホールの女の子にイチャモンをつけている。
俺は間に入って女の子を助けてやる。
「てねぇー、覚えてろよ!」
オバはんがそう吐き捨てて出て行った。
昼時は、メニューが「昼定食」しかないのでそれを頼む。出てきたのは、やっぱりバッタの増殖筋肉、でも味付けは違う。出身ネストごとに好みの味付けも変わるものだが、ここのはきつめだった。
食事をとり、1時間ほどしてワークショップに行くと扉が開いている。中を覗くと、さきほどのオバはんがデンと構えていた。
「やべぇ、き、きまりが悪いぜ………」
一瞬ためらったが、俺は意を決して中には入り、普段使わないていねいな言葉で話しかけた。
「ごめんくださいまし…」
よく見たら昼寝をしていた。しかも、少しイビキまでかいている。
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