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『教育実習』
さして教師になるつもりも無い私にとっては、ちょっとしたイベントみたいなもんだ。まぁ学生時代の思い出の一つ、にでもなればいいかな?適当に楽しんでこよう。
意気込みとしてはその程度で、この『公立 風架け橋女子高等学校』の門をくぐった。
私だって、ついこの前まで女子高生。そんなに大差あるものかと思いつつ、登校してくる生徒達を見回す。
都会の学校だけあって、制服なんて洗練されてる。濃紺のダブルのブレザー、襟元のクロスタイがお洒落だな。
「おはようございます」
「あっおはよう」
ちょっと緊張。初めて見る私にも、きちんと挨拶してくる。教育実習生が来るって聞いてるのかな?制服だけじゃなくて、『出来の良さ』もうちの地元の学校とは大違いだ。
事の起こりを思い返してみれば、あれは大学に通い始めたばかりの頃・・・
お洒落なカフェで女子トーク。3人いる友達の内、1人は同じ地元の子で、昔からしっかりしてるんだよね。そんな彼女が切り出した話だった。
「でもさ、ぼけっとしてらんないよ。大学出たからって、就職きついって言うし」
私としては、今はそんな事考えたくない。やっと勉強から解放されて、おまけに都会で念願の一人暮らしが出来るってのに。
・・・もぉ幸せ気分に水をさされたよ。
「そうだねぇどうしよう?」
あとの2人は大学入ってからの友達で、私以上にのんきな子達だった。
「まぁ資格でも取っとくとかね」
そう言ったのは私だから、結局のところ自分の意思で教員を目指した事になるのか。
「やっぱりその線かなぁ。実千果の専攻だと、教員資格ある?」
「あるよ。佐和も考えてた?」
・・・私って、こういう所あるな。なんか訳知り顔な言動をしちゃう。見栄っ張りなんだよね、きっと。
「じゃあ、私達もだね」
「うん、すごいね。実千果も佐和もちゃんと考えてるね」
そんな風に言われて、悪い気はしなかったんだけど、この2人は早々に資格からリタイアする。1人はさぼりまくって、単位落として。もう1人は親のコネでさっさと就職決めて。いいよね、都会育ちは恵まれててさ。
楽しかった3年と1ヶ月は、あっという間に過ぎて、いよいよこの時期を迎えた。
「じゃあ、やっぱりこっちで実習するんだ」
故郷の学校で実習をする為、長距離バスで帰る佐和を見送った時に、そんな会話をした。
「何かさ、うちにはもう部屋ないって。ひどい親だよね」
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