第一章 主旨説明

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実は親に相談なんかしてない。都会に慣れた私としては、例え2週間でも田舎には帰りたくないってのが、本音だったんだよね。 「大学で紹介して貰った高校に行くよ」 「知らないとこだと、不安じゃない?」 「大丈夫・・・だと思う。何かいい学校らしいよ。優等生ばっかりだって」 しかも偏差値は中くらい。お嬢様学校って訳でもない。つまり、気軽に実習こなせちゃう適度な学校ってことだ。 『風架け橋』は、毎年教育実習生を迎えている。その理由は、教員課程クラスが各学年に一クラスずつあるからだ。 私と同じで、大学の紹介で来た実習生が2人。1人は男子で1年を担当する、ひょろっとした薄い顔をしている。この程度の顔でも、職員室に行く間に出くわした女生徒がきゃっきゃしていた。女子高は不幸だな。 職員室に入って、それも分かる気がした。若い男性が全然いない。先生はおばちゃんか、お爺さんしかいないのでは? 「はい、古内 実千果さんはこっちに来て」 3年の学年主任は、アラフォーくらいの男性教師だが、言葉使いや身のこなしからしておねぇっぽい。 しかし、3年かぁ若干プレッシャーあるな。出来れば2年が良かったな・・・もう1人の女子実習生を恨めしく思った。 「こちらが、教員課程クラスの担任の稲井先生です」 紹介されたお爺さん先生は、座ったまま会釈だけして、お茶飲んでる。 「ちゃんとご指導して下さいよ」 言い残して、学年主任は行ってしまった。 「じゃあまぁ、そこ座って」 と、隣の空いてるデスクを指差されたので、机の上に鞄を置いて椅子に座る。私としては、授業の打ち合わせしたり、今の内に生徒の話とか聞かされるものと期待していたのだが・・・ 「ほぉ実る千の果実で、実千果(みちか)とはいい名前だなぁ」 「(私の名前なんてどうでもいいから!)あの、生徒さん達ってどんな感じですか?」 そんな私の切羽詰まった様子を受けて、それでもお茶を離さずに、稲井先生はのんびりとした口調で言った。 「なぁに何にも心配いらないよ。い~い生徒達だから」 また、お茶に口をつけ息をつく。ようやく空になったらしい。それから、チラリと時計を見てから、仕方なさそうにゆっくり立ち上がって腰を伸ばす。 「どれ、遅れると生徒に怒られるからな。そろそろ行くか」 ・・・怒られるって、どういうの?呆れたお爺ちゃん先生だ。そう思いつつ、後にくっついて職員室を後にした。
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