第一章 主旨説明

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3年の教室は3階で、校舎の最上階にあたる。職員室は1階だから、階段を登って行く訳だが・・・別に階段がきついって訳ではなく、心臓がドキドキしてきた。 「でも、本当に廊下とか綺麗ですね」 緊張をほぐす為、当たり障りの無い会話をしようと思った。 「あぁ、生徒達がね。掃除やら窓拭きやら、良くやってくれるんだよ」 ・・・生徒をベタ褒めだな。そんな真面目な高校生ばっかな訳無いと思うけどな。 階段を登りきると、整然と教室が並ぶ。3階の一番奥の教室・・・ここが教員課程クラスの教室だ。 稲井先生はさっさと扉の引き戸を開けてしまうもんだから、深呼吸する間もなく、私も飛び込むように教室へ入った。 「起立!」 清々しい声が響き、生徒達は椅子を引きずる事なく、全員がすっと立ち上がった。 私は笑顔がひきつるのを感じつつ、先生について教壇へ上がる。正面を向いて顔を上げると、彼女達の視線が一斉に私に注がれる・・・様な気がした。 改めて見ても、本当に真面目そうな生徒ばかり。派手な茶髪だったり、ミニスカ制服だったりする子は1人もいない。 私、大丈夫かな? 髪は少し色が入ってるけど、目立たない程度だし、ロングの毛先を軽く巻いてきたけど、ケバく見えないよね? 顔は薄化粧で抑えて、口紅は薄いピンク。服はスーツだから問題なし。スカートだって短くない!ヒールも高すぎない! アクセサリーは、いつも着けてるネックレスしてきたけど、いいよねこれくらい。だって地味過ぎると、おばちゃんって見られたりしない? あぁなんか、この清らかな生徒達の瞳を通して見られたら、私の何もかもが否定されてしまうんじゃないかって怖くなるよ。 「礼!」 「おはようございます!」 凛とした号令の声に続く、美しい良く揃った声が胸に届く様だ。本当に気持ちのいい挨拶をしてくれる生徒達だなぁ。 「ほっ」と息をついたのは4時間目が終わって、職員室に戻ってきた時だった。 別に何をした訳でもない。ただ先生にくっついて各教室を巡り、授業を教壇の脇から見ていただけだ。 でも疲れた。生徒の目ばかりが気になっちゃって。3年の大体のクラスを見たわけだけど、みんな真面目だ。でも厳しい校則に縛られてる訳ではない。 言うなれば、自主的に守ってる。そういう感じ。そうする事が、集団生活を快適なものにすると知っている。みんな楽しそうだし・・・驚いた、本当にこんな学校あるんだな。
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