第一章 主旨説明

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そう、最初に教室を訪れた時、私のぐだぐだな自己紹介を受けて、クラスの代表として挨拶してくれた生徒がいた。 教室が笑い声で溢れて、照れ笑いを浮かべる私の正面に位置する、一番前の席の生徒がすっと立ち上がった。 「ご挨拶ありがとうございます。学級委員長の長峰 遥です」 綺麗に礼をすると、彼女は続けた。 「1年で1度の教育実習の機会を、私達はみんな楽しみにしていました。今回は素敵なお姉さんという感じで、嬉しいです。 私達も教育者を志す者として、授業以外からでも学ぶべき事は多いと感じております。どうぞ、一歩先を行く先輩として、未熟な私達の姿勢を正すとともに、色々な相談に乗って頂けたら幸いです」 その時、爽やかな笑みを浮かべる彼女に、一瞬見惚れてしまったのを憶えている。 「あぁ長峰な。あいつに良く怒られるんだよ。生徒の挨拶にはちゃんと返事をしろとか。敷地内は全部禁煙にされたし」 「何言ってるんです。稲井先生はおかげで煙草やめられて良かったじゃないですか」 職員室で稲井先生に「長峰さんってどうゆう・・・?」って質問したら、何故か学年主任の先生が口を挟んできた。 「少し前までは生徒会長を務めていました。あの子が生徒会に入ってから、本当ガラッと変わったんですよ。服装の徹底や校内での節度ある過ごし方。彼女は何事も人任せにする事はありませんでした。他の生徒達と話し合う機会を作って、熱心に説いていった結果なんです。 口にした以上責任を持ち、率先して実行に移す。そんな姿勢に、多くの生徒が心打たれたようね」 どうやら学年主任も、長峰さんにべた惚れのようだ。彼女を褒め称えたくて仕方がない、と言ったところか。 「生徒への指導だけじゃないんですよ。学校も変えようって・・・中庭の花壇を整備して、そこでお昼を食べるのを許可するように先生方と掛け合って。煙草の件もそうだけど、生徒の為に躊躇無く行動出来る。だから、みんなに支持されるのよね」 本当に?そんな子いる??唯の高校生でしょ? チャイムが鳴り、お昼の終わりを告げる。午後の授業は『教員課程クラス』からだ。 私はいつものように、教壇から一歩下がった位置の窓際に立って、授業を眺める。稲井先生は普段はのんびりだが、授業になると、とにかく黒板に書く。生徒達は書き写すのに必死だ。大変そうだと思いつつ、ついつい学級委員長・・・長峰 遥に目がいってしまう。
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