3人が本棚に入れています
本棚に追加
『なぁ~んだ。優等生って言ったって、お洒落に興味がある普通の女の子だ』
初日はへばった。家に帰ってからは、もう何にもする気しなかった。
考えてみればそれはそうだ。何せ、ずーっと立ちっぱなしだったんだから。おじいちゃん先生気付いてよ。
「明日はちょっとは座らせてくれないかなぁ~」
と呟いて、ベッドに倒れ込み、教育実習1日目を終えたのだった。
そんな願いも虚しく、2日目も立ちっぱなし。もう限界、午後まで保たないよ。と思っていたら、
「午後の学級会参加してちょうだい」と、稲井先生に藪から棒に言われた。
「学級会ですか?」
「うん、週の終わりと始まりの午後は、学級会を開くんだよ。うちのクラス」
そう言えば、そんな時間割になってた。聞こうと思ってたんだよね・・・何するの?
「委員長が、ぜひ古内先生をご一緒にって言ってるからさ。まぁ頼んだよ」
・・・また、長峰さんか。でも気に入って貰えたのかな?私。
断る理由も無いので、よく分からないまでも引き受け・・・教科書は要らないだろうから、ノートだけ持って立ち上がって、あれ?おじいちゃんがまだお茶飲んでる。
「あの、もう行かないと遅れるのでは?」
遅れると怒られるんでしょ?
「いやぁうちは生徒がしっかりしてるから、私なんぞ居ても邪魔なだけ。全部任せてるよ」
「え?」戸惑っている私の横を、学生主任が頷きながら通り過ぎて行った。
・・・そうなの?それでいいの?で、私は1人で教室へ行くわけ??
もう、あの先生達には怒る気もしない。呆れるばっかりだ。そんな愚痴をぶつぶつ言いつつ、とにかく教室へ赴いた。
扉の向こうは、話し声ひとつしない。シーンと静まり返って、恐らく私が来るのを待っている。
緊張を抑えようと、胸に手をやって。それから扉の引き戸を開けた。
「起立!」
いつもの声。だけど、教室の様子が違っていた。机は全て、教室の後方に積まれていて、広く空いたスペースに椅子だけが円形に並んでいる。椅子から起立した生徒達は、みんな私の方を向いて、
「おはようございます」と、授業の時よりくだけた感じで挨拶してくれた。
「みっちゃん、こっちこっち」
莉久と菜々が、自分達の間の空いてる席を指差して呼んでくれた。丁度、円の軌跡が教室の1番後ろにくる位置だ。
みんなが着席する中、2人の元へ行き、小声で聞いてみた。
「えっと、何するの?これ」
「学級会だよ」
最初のコメントを投稿しよう!