1人が本棚に入れています
本棚に追加
4月 矢崎茉莉というクラスメイト
人には皆、運命の出会いというのがあるのかもしれない。
少なくとも俺には、運命の出会が訪れた。
この高校を選ぶのに、深い意味はなかった。
『家から近いから』
ただそれだけの理由で高校を選んだ。
でも……。
俺は今、この選択に心の底から感謝していた。
何故なら……。
俺の隣の席に、とても可愛いクラスメイトが座っているからだ。
いや、可愛いというより美人といった感じだ。
そして俺は、彼女のことを知っていた。
初めて彼女を目にしたのは、中学校の修学旅行のときだった。
偶然修学旅行先が同じだった別の中学校。その生徒の中に彼女はいた。
容姿端麗とはまさに彼女を指す言葉だと思った。
その彼女が今、俺の隣の席にいる。
名前は矢崎茉莉。
座ったままでもスタイルの良さが窺える、白くて長い手足。
後ろで纏めた、艶のある僅かに茶色かかったロングヘアー。
大きな瞳とぷっくりとした唇からは、色気すら感じる。
本来、生貝という俺の名字からは50音順では遠すぎて、席が隣になることなどありえなかったが、この高校は50音順で出席番号を決めない変わった学校だったため、天文学的な確率をすり抜けて、席が隣同士となった。
「矢崎です」
軽く会釈しながら、隣に移動してきた彼女は微笑みながらそう口にした。
「あ、どうも。生貝です」
そのあまりの可愛さに、やや言葉に詰まりながら答える俺。
眩しい。
容姿に恵まれ、笑顔も完璧な彼女のことが、俺には余りにも眩しかった。
それでも、隣の席が可愛い女の子なのは素直に嬉しい。それだけで日々に潤いが生まれそうな気がする。
これからの高校生活、楽しいものになるだろうか。などと考えているうちに、高校生の初日は時間が過ぎていった。
最初のコメントを投稿しよう!