4月 矢崎茉莉というクラスメイト

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 それから、新しい学校生活も一週間が過ぎ、それぞれの科目の授業が通常営業となってきた頃、隣のクラスメイトに違和感が……。  うたた寝をしている……。  チラリと隣の席を見ると、頬杖をついてうつらうつらと舟をこいでいるのだ。  それも偶にではない。  毎日、あらゆる授業の際に、そのような状況なのだ。  さらに一週間後、登校した直後の出来事。 「生貝君、数学の課題やってきた?」  そんなことを矢崎が不安そうな顔をして聞いてきた。 「えっ、ああ、一応やったけど」  相変わらず、おろおろと答える俺。  その言葉を聞いた矢崎は、緊張したような表情を崩さず口を開く。 「ね、もし良かったらそれ写させてくれない?」  矢崎と目が合う。  大きく綺麗な瞳に、俺の心拍数が跳ね上がる。 「べ、別にいいけど、返してくれよ」  強がってちょっと、軽口を叩く。が、声は少し上ずっていた。 「やった!ありがとっ!」  矢崎は両手を合わせて喜んでいる。そんなに喜ばれると悪い気はしないし、何より彼女の笑顔は誰よりも可愛かった。  授業中の居眠りや、課題のことから考えるに、矢崎茉莉はあまり勉強が得意なタイプではないのかもしれない。     
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