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それから、新しい学校生活も一週間が過ぎ、それぞれの科目の授業が通常営業となってきた頃、隣のクラスメイトに違和感が……。
うたた寝をしている……。
チラリと隣の席を見ると、頬杖をついてうつらうつらと舟をこいでいるのだ。
それも偶にではない。
毎日、あらゆる授業の際に、そのような状況なのだ。
さらに一週間後、登校した直後の出来事。
「生貝君、数学の課題やってきた?」
そんなことを矢崎が不安そうな顔をして聞いてきた。
「えっ、ああ、一応やったけど」
相変わらず、おろおろと答える俺。
その言葉を聞いた矢崎は、緊張したような表情を崩さず口を開く。
「ね、もし良かったらそれ写させてくれない?」
矢崎と目が合う。
大きく綺麗な瞳に、俺の心拍数が跳ね上がる。
「べ、別にいいけど、返してくれよ」
強がってちょっと、軽口を叩く。が、声は少し上ずっていた。
「やった!ありがとっ!」
矢崎は両手を合わせて喜んでいる。そんなに喜ばれると悪い気はしないし、何より彼女の笑顔は誰よりも可愛かった。
授業中の居眠りや、課題のことから考えるに、矢崎茉莉はあまり勉強が得意なタイプではないのかもしれない。
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